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  • 2014.02.15 Saturday

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日々のなかの真鍮に ある春の料理を(3月30日)



yuta 須原健夫 http://www.yuta-craft.com





マクドナルドを食べてみたい。


僕は小さい頃、外食をほとんどしたことが無い。

父親は外食が嫌いで、ご飯は家で食べることが普通だった。


煮魚とか、ふきとか、菜の花とか、栄養があるらしいと言って

おかんがたまに買ってくるモロヘイヤを少年時代の僕は、暗澹とした気持ちで

食べたものだ。


そんな僕が、小学校で同級生達が話しているハンバーガーなる食べ物に、

胸一杯の夢を膨らませていたのは言うまでも無い。

赤い頭をしたピエロは不気味だったが、みんなが楽しそうに話すなんちゃらバーガーや

ポテトは、僕の中でキラキラと輝いていた。


そのずっと後、上京して一人暮らしを始めた頃にその反動が出た。


昼ご飯は、マクドナルド一択。

憧れのなんちゃらバーガーのLLセットにたっぷりケチャップをつけて

うまいうまいとマクドナルドを食べ続ける日々。


甘い匂いのする都会のネオンの中で、ハンバーガーを腕いっぱいに抱える

僕は、世界で最も煮魚と遠いところに立っていた。



それから、幾年か。


歳を重ねる毎に、マクドナルドに対する気持ちは変容していく。

少しずつ気付いていく。


頬張った瞬間に、刺激的な味は快楽となって心の表面を滑り落ちていく。

快楽は一瞬で通り過ぎ、なんとも言えないうしろめたさが心を包む。


あんなにキラキラ輝いていたハンバーガーの包み紙は、まるでからっぽで孤独な気持ちを

象徴するように、トレーの上でカサカサと音を立てていた。


僕が、丁寧な食に対して興味を持ち始めるのと、真鍮で生活の道具を作り始めるのは、

よくよく考えてみると同じくらいの頃からだったかもしれない。


少しずつ、ほんとに少しずつではあるけれど、量販店のお惣菜よりも、旬の野菜が

美味しいと思えるようになっていく。

心は、滑り落ちていくような快楽よりも、ずっと大切な何かを探し始めていた。



そんなある日、夕顔さんの料理を食べる機会があった。


正直、度肝を抜かれた。


今まで幾度となく食べてきたはずの野菜達。


そんな顔見知りの野菜達が、まるで心を開くように、本当の姿をそこにさらけ出している。

きをてらうことのない正直な味が、じんわりと心に沁みていく。


その料理は、神社の境内みたいに静かで、祈りみたいに純粋で、家族を想うみたいに

熱が籠っていた。


美味しい。


心のどこかの栓が抜けた。


食べることは、生きている意味そのものじゃないか。

そう想わせるほどに、夕顔さんの料理は衝撃的だった。



それ以来、作品と料理の繋がりをより意識するようになる。

料理屋さんでは、まずうつわと盛りつけを存分に楽しんで、それからゆっくりと

味の中を散策する。

料理をする時は、丁寧に大切に、盛りつける時は色どりを添えることを忘れずに。


煮魚にのせられた輪切りのしょうがを想い出す。

おひたしのうえにふわふわと腰をおろすかつおぶしを想い出す。

様々な野菜や果物を使った、楽しい食卓を想い出す。


ああ、そうか。


おかんの作る料理は、家族を想う気持ちそのものだった。


刺激が足りないと思っていた味は、身体を気遣う想いだった。

大皿をかこむ、小鉢や小皿は、楽しい食卓をつくる優しさだった。


料理は気持ちをいただくものだった。



今日、何食べたい?


嫁の声が聞こえる。

僕は少しだけ考えて口を開いた。


煮魚を食べたい。 



※会期中のお食事会では、
 yutaさんの真鍮のうつわ・カトラリーを使った春の料理をお出しします。 


連載のタイトルがそのまま展覧会のタイトルとなる本展は
事務局兼rojicafe atoにて行われます →  

会期がやってくるまで、ひとまずこちらの連載をご覧ください。



※本連載は一ヶ月間の短期集中連載、毎週土曜日更新となります。


手創り市






はじまる 栃木トリップ

*本日、たゆたう日記の更新はお休みとなります。来週をご期待下さい*





3月30日、よいよはじまります。栃木トリップ!!
二人の女の子のイラストレーターによる、時を遡り、過去と今をむすぶ展覧会。
彼女達の現在進行形を是非ともご覧下さい!!



栃木トリップ 
会場  :Salvador 2階  http://www.kissa-salvador.com

※営業時間は店舗の営業に準じます
※展覧会は入場無料となります。展示だけでもご覧頂けます。

「オープニング・ライブ」
出演:山口洋佑 my space → http://www.myspace.com/jutomani
日時:3月30日 18:00頃から〜30分ほど
※オープニング・ライブは入場無料。お気軽にどうぞ!!

1ヶ月に渡る長丁場の展覧会となりますが、
二人の在廊日や会場の様子は公式Twitterでお知らせしてゆきますね。


*展覧会にはこんな作品達がならびます*
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「栃木トリップ」








週刊ロバビル・3月26日号


himaar HP  http://himaar.com/



ロバビルから、こんにちは。


春ですね。


梅、水仙、菜の花、桜。

次々に花が咲きはじめました。


みかん、ぽんかん、でこぽん、ネーブル、はるみ、せとか。

妻の好物の柑橘も次々たのしめる幸せな季節。

瀬戸内は柑橘の産地で、山口県は特にみかんが有名。

山口県のガードレールは白じゃなくて、みかん色なんですよ、知ってました?


夫の好きないちごも、この時期は岩国市内の平田・川下・由宇産、お隣りの柳井産など、

新鮮な地元のものが出回ります。

いきつけの美容師さんは先日お子さんを連れていちご狩りに行ったそうです。

「たくさん食べようと思っても、意外と食べられませんよね」と夫が言うと、

「そうなんですよー、3パックぶんぐらいしか食べられませんでした」と。

さ、さ、3パックぶんー!?

想像しただけで、いちご味のげっぷが出そう(失礼)。

それだけ食べたら十分だと思います……。


第3セクターの錦川清流線では今週末「お花見列車」、別名「利き酒列車」という企画が

あるそうな。

電車の中から錦川沿いの桜を眺めつつ、岩国市内の5つの酒蔵のお酒を飲み比べてたのしむ、

というもの。

魅力的〜!

でもその日は乗れないんだよなあ、と残念に思っていました。

すると先日、高野さん(市内で作陶しているKOUNO TOUKITENさん)が、ウチの店で

魔法瓶を見ておられる。

「出展用?」と聞いたら、「いや、お花見列車、都合が悪くて乗れないんで、これに熱燗

入れて別の日に乗ろうかと思って」と。

その手があったか!

さすがです。


春になっていろいろと嬉しいことはあるけれど、とにかく暖かくなってきたのが一番嬉しい。

何度も書きますが、私たちは寒いのがとても苦手なので。

朝もだんだんと早く起きられるようになってきましたよ。


春、大好き!

……と言いたいところですが、でも、そこまで言えないんだよなあ。

あれさえなければ……。

ひょっとして、あなたも、ですか?

……そうですか。

花粉……辛いです。


さて。

今週末は長崎で開催される「ナガサキリンネ」というイベントに出展します。

長崎の春はどんなかな?

なので、来週の「週刊ロバビル」はお休みさせていただきます。


それでは、また再来週。

ロバビルからでした。



※週刊ロバビルは毎週火曜日の更新となりますが、
 記事にもありますように来週はお休みとなります。
 再来週をお楽しみに!!

手創り市





日々のなかの真鍮に ある春の料理を (3月23日)


夕顔 藤間夕香 http://www.fujimayuka.com



日々のなかの真鍮に ある春の料理を。


金工作家・yutaさんのつくる真鍮の暮らしの道具展と、

夕顔による 真鍮のうつわ・カトラリーをつかった春の料理 / 食事会が、

4月19(金)よりrojicafe atoにてはじまります。


ご一緒する機会を願っていた yutaさんとのこの展示会のこと、

短期連載としてつづります。

今回はわたしの番。


yutaさんのつくるものたちは

素材そのもののもつ美しさを、すくいあげてカタチに落としたよう と思う。

そして触れたときの心地よさ、使い勝手も考えられたつくり。

使うこちら側に、余白をあたえてくれる愉しさがある。


その余白は、私のなかに景色をつくって、

(ささやかだけれど目を奪われるような / 例えば雨上がりに、

 植物の葉先についた瑞々しいしずくを見つけた時のような... )

景色は料理へひろがる。


料理をつくる時、この瞬間のことをとても大事に思う。


うつくしの金色をかたどる 少し深さのあるうつわには、瑞々しい緑の野菜を。

今の時期には、菜の花とたらの芽。

春かぶらのふっくらとした白色と旬魚の甘みが緑をたてる。

透けるように仕上げたお出汁のあんをゆっくり垂らすと、

うつわの鎚目に小さなしずく、とろんと広がり金色をみたす。


「菜の花とたらの芽、旬魚の春かぶら蒸し / 真鍮鉢」




※会期中のお食事会では、

 yutaさんの真鍮のうつわ・カトラリーを使った春の料理をお出しします。 




連載のタイトルがそのまま展覧会のタイトルとなる本展は

事務局兼rojicafe atoにて行われます →

会期がやってくるまで、ひとまずこちらの連載をご覧頂ければと。名倉



※本連載は一ヶ月間の短期集中連載、毎週土曜日更新となります。


手創り市







たゆたう日記(3月22日)


今週は、襤褸(「ぼろ」または「らんる」)について書きます。

襤褸とは、継ぎ接ぎ(つぎはぎ)だらけの布のことです。

なんだい、ボロボロの布じゃないか、と思われる方もいらっしゃるだろうだけど、実際ボロボロ

の布ではあるのだけど、いまや日本の「BORO(ぼろ)」は国際語にもなっており、その美しさ

はヨーロッパをはじめ、世界中のアーティストからも注目されています。

世界の一流ファッションブランド関係者にもこのBOROの有名なコレクターがいらっしゃるの

だとか。


明治〜昭和初期頃、布は大変に高価なものであったので、現代のように簡単に買い替えられるよ

うなものではありませんでした。使い、破れた部分には当て布をして縫い、直し、また破れたら

当て布をして縫う、を繰り返し繰り返し、そして大切に使われてきたものです。

野良着から肌着、布団もそのようにして長く長い間使われてきました。


ただ、そのようなツギハギだらけの襤褸は当時の人々にとって「恥ずかしいもの」という意識が

あったので、決して表舞台に出てくることはありませんでした。恥じらい。(「美の壷」参照)

見いだしてくださった方、ありがとう。


襤褸のどこが魅力なの?といわれれば、この何枚にも重ねられた「継ぎ」や「刺し子」、そして

様々な藍の色なのですが、わたしはその中でも特に、“作為の無い”直しに魅力を感じています。

「布を当てて縫う」ということは当時の人々にとってはあくまでも「直し(修復)」「補強」で

あって、使い続けるための必然であって、決して格好よくしてやろうとか、ましてや「デザイン

する」 などという意図や意思は感じられません。わたしはその“作為の無さ”に美しさがあるの

だと思っています。

小さな子供が描く絵や、アウトサイダーアートのような。


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余った布や、使えなくなった衣類の布を切り分けて、また別の布に当てる。使うために刺す。

小さな「継ぎ」にも優しさや愛が感じられてとっても可愛い。

襤褸は「表」も「裏」も見所はたくさん。

たいせつに使う、ということを優しく教えてくれます。


下は、エプロンのように形も変え、これでもか!ってくらい刺してあるとろとろになった襤褸。

もはやアート。


【表】

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【裏】

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【表】とろとろ

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【裏】ツギハギたくさん  美しい刺し子



襤褸のまたの名をらんると云うのに驚きましたが、

襤褸の表現に「とろとろ」とあらわすのにも驚きと共に新鮮さも感じました。

らんるがとろとろってことですね。 名倉


※「たゆたう日記」は毎週金曜更新となります。


手創り市

http://www.tezukuriichi.com